「ADHDの不注意」 "不注意の特性をマネジメントするために、まず理解が必要"
きょうは、ADHDの名称にも含まれている「不注意」について。
『ADHD(Attention Deficit Hyperactive disorder):注意欠如多動性障害』は、名称とは異なり、注意機能が欠如しているわけではありません。
注意力を維持し続ける能力が並外れて高くなるシーンもあるからです。
環境や状況などいくつかの条件が整うことで、強い集中力を発揮しやすくなり、「周囲も驚く成果を職場で出す」というのもよくある事例の1つ。
過集中といわれるこの状態のプラス面を現れやすく工夫をしたり、集中のしすぎで体調を崩さない方策などが必要になっていきます。
こうした対処策に関しては、今後お伝えしていければと思います。
さて、ここではADHD特性を理解するために、密接に関係する脳の「注意機能」についてみていきたいと思います。
この注意機能は、ADHDの「不注意」にとても関係している機能です。
注意機能
1.”持続性”・・・特定の事柄へ注意を向け続ける。
2.”分配性”・・・周囲のさまざまな事柄に注意の先を分けて向ける。
3.”転換性”・・・必要に応じて注意の対象を切り替える。
4.”選択性”・・・多くの情報から注意を向ける対象を取捨選択して選ぶ。
注意機能をひらたく説明すると上記の通りです。
ADHD特性をもっている脳の場合、上記の複数またはすべての性質がコントロールしづらくなっています。
3歳から50代のADHDを持つ当事者さんをみてきて個人的に思うのですが、この日常的な注意機能の弱さが、いざ集中しようとする時に高い注意力を生み出すのに一役かっているのではないか、と考えています。
あくまで現場の感覚です。
不注意症状の具体例について、DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)にも記載がありますので、今回はそれをご紹介しておきます。
・「精神的な忍耐を要する課題(報告書の作成、書類に漏れなく記入する、長い文章の見出しなど)を避ける」
・「外からの刺激(無関係な思考を含む)で容易に注意がそがれる」
・「日々の活動(電話の折り返し、伝票の支払い、会議の約束など)」
など。
私のクライアントさんたちによく共通するエピソードとしては、
・「会社へ遅刻してしまうor外出ギリギリまで起床しづらい」
・「職場でケアレスミスをしてしまいやすい」
・「必要な物を忘れてきてしまう」
・「いつの間にかぼうっとしている」
などがあります。
ここまでみてきた注意機能ですが、当然これらの「不注意」は、ADHD特性をもっていない脳でも起こりえます。
一般的な脳でも、疲労や精神疾患の影響下にあれば注意機能が弱ってしまいますし、体内のホルモンの影響でも注意機能が弱ります。
また、認知症の初期症状でも似たような症状があります。
なので、ADHDを診断する精神科医は多くの情報をもとに、当事者さんたちを慎重に診る必要性にせまられているのです。
ちなみに、ADHD特性を持っている方の場合、疲労や精神疾患などの影響で注意機能がさらに弱まります。つまり、ADHD特性の「不注意」や「衝動性」の程度が高くなるということ。
私どものセッションをご利用いただく際にも、精神疾患等の状態があまりにも思わしくない場合は、先に病院での受診をおすすめしております。
(余談ですが、思春期の黄体ホルモンの影響による自律神経の乱れや、思春期&幼少期の脳機能の汎化による月齢に応じた改善でも特性が強まったり弱まったりしますが、ここでのテーマとはまた別の話になります)
「この不注意のについて、どうしたらいいの?」というところについては、実際に有効だった対処法を、今後ご紹介していきたいと思います。